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アンナプルナベースキャンプの朝。
10月6日、朝5時30分。
ロッジの外はまだ暗かった。
ヘッドランプを装着して独り外に出たのだった。

マチャプチャレの方向を見てドキッとした。
山の端にナイフみたいに細い三日月。
球形の月面のエッジが強烈な太陽の光に照射されている。
シンとしていて、冷たくて、独りで、怖かった。


「なぜまたヒマラヤへ行ったの?」と聞かれる。
行ってみたかった、という答えで納得してもらうのは難しいのかもしれない。
けれど、最近、行きたかった意味が少しわかってきた。

袋小路にいた。
インドのフェス、進めないとできなくなっちゃう。エアチケットだって手配しないといけない時期だ。だけど、資金面では何も決まっていない。助成金も確定していない。フェスはともかく、息子たちの進学のことだってある。
もやもやと気持ちが行ったり来たりしていた。悩んでいてもはじまらないと思いつつも、次の瞬間にまたくどくどと考えていたり。

ヒマラヤに行って、限界まで歩いて、ふらふらになって帰ってきたら、スコンとした気持ちになっていた。

2010のフェスを終えて、そこから快調に走りだして、そして壁も消した。
壁は真っ白に戻った。
人事を尽くした気持ちになっていた。
でも、尽くしたと思ったときから少しずつ澱(オリ)みたいなものがたまってきていたのだと思う。

その澱が不思議と消えていた。
状況は相変わらずで悩みは多い。そこここにいろんな高さのハードルがあって、必死に越えていく感じは変わらない。でも、どこかスコンと抜けている。鼻づまりが解消したときの気分。

私たちが毎晩眠っている間にも月は太陽の光を反射して静かに運行している。
アンナプルナサウス、アンナプルナ機▲ンガプルナ、アンナプルナ掘▲ンダルバチュリ、そしてマチャプチャレが、今もあそこにある。
そのことが、私の気持ちをひんやりとなでていく。

夜、空を見れば、あのときの月がそろそろ満月になろうとしている。

明けない夜はない。
月面を照射していた光が、今度はわたしたちの地球を照射し始める。

south

















アンナプルナサウス。午前6時10分。
光はとてもあたたかだ。

今朝、メールをあけたら、インドからよい知らせが届いていた。
うれしかった。

スコンと空っぽにすると、そこによい知らせが舞い込む隙間ができるのかもしれない。
うん、たぶん、そういうことなんだと思う。

かつて山をやっていた旧友が言った。
「山ってそのためにあるんだよ、知らなかった?」