ootaya12
石巻でフランス料理店を長く営んできているおおたやさんに電話をした。
「お元気ですか? 石巻はどんな様子ですか?」

おおたやさんはいつもの優しい声で答えてくれた。
「避難所も全部閉鎖されまして。最近は、そうですね、ひところの波が終わったという感じです」

8月に伺って、とてもいい時間を過ごすことができて、すぐにでも行きたかったけど、こちらの生活を続けていくうちに、時間が過ぎていった。
今月行こうと思っていたけど、
9月末から息子にうつされて風邪をひいてしまって弱っていたことと、
後半は出雲での報告会とインドが重なった。

次回の「石巻にフランス料理を食べに行く会」はインドから帰ってきた11月の半ばころの予定となった。
そのことをお伝えしないといけないと思って電話をしたのだった。

「工事の方たちはたくさんいらっしゃいますね。海辺の被災地はトラックの往来が盛んですし、ホテルも工事の方たちで年末ごろまで満室だそうですよ。でも、商店街は歩いている人もいなくて、しんとしています」

そういう人たちが商店街にお茶を飲んだりごはん食べたりしに来てくれればいいのに、と、無茶な思いで問うてしまった。

「いえ、そういう方たちは、居酒屋さんとかでお食事して、夜はスナックなどに行くみたいですよ」

そうだよ、フレンチをのんびり食べる人はいないよなー。
おおたやさんはこんなふうにも言う。

「家があった場所を更地にして、また建て直すという方がたくさんいます。町全体がそういう方向なんですね。
大工さんが忙しくて、1日来て仕事をしたらあと1週間は来れない、そんな感じだそうです」

大工さん大募集中のようです。。
日常を楽しむ。
たまにフランス料理を食べに行ってみる。
それはとても幸せな時代の行為なんだろうか。

ともあれ、11月にインドから帰ってきたら、お電話して伺う算段をしたいと告げた。

「えぇ、えぇ、もちろん、いらしてください。
また、おおくにさんとご相談をしてメニューを決めましょう」

そんなふうに言ってくださったことがうれしかった。
メニューの素材については、いろいろとお願いしている。
本当は地の物を使ってもらいたいのだけれど、今はそれがかなわない。
オフィシャルな会の主宰として、私は毅然と、正しい情報を集め、
判断していかなくてはならない。
・・・ジビエの季節なんだけどな。

「奥様はお元気ですか? どうぞ、よろしくお伝えください」
「はい、おおくにさんもインドへ気をつけて行っていらしてください。お元気でいてください」
「ありがとうございます。お元気で。また連絡します」

minna
「みんなっ」

写真はヨコハマトリエンナーレの“黄金町バザール”の遠藤一郎の作品。
震災後、東北へ通った記録。
竜宮美術旅館にある。
ryuguu1

大工仕事はできないけれど、
おいしいものは食べに行ける。

モチベーションもある。

「みんなっ」

フランス料理を食べに、石巻に行きましょう♪