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出発の日が明後日に迫っているから、この記事はひとつの覚え書き。

邦題『美しき冒険旅行』。

てっきり新作なのだと思って借りてきて、
70年代ごろをまるごと再現していてすごいなーと思いながら観たけど、
これは大きな勘違い。
1972年に封切られ、今、ニューマスター版が出回っている。

でも、今、この映画に出会えた意味は大きい。
ノコプロジェクトでワルリ族の人々と家を建てるという旅に出る前なら、
なおさら。

70年代から発展に発展を重ねてきた結果、
「今」の私たちはどんな風景の中にいるか。
私たちが、40年かけてたどり着いた場所がどんな場所なのか。
この映画を見ることでくっきりとしてくる。

映画の冒頭、
ショッキングな事件の巻き添えで、10代の姉と小さな弟が荒野に放り出される。
歩いても歩いても果てしない荒野が続く。
ジョン・クラカワーの『荒野へ』で読んだ、あの自然の脅威が蘇った。
自然界はサスペンスフルだ。
危険で美しい場所。
私たちはそこに憧れる。
そして貪欲な私たちは、なんとかなだめすかし、
あるときは強引に、あるときは暴力的に、
私たちの側へと引き寄せてきた。

でも、それがせめぎあっている場所が、この世界のどこかに、必ずある。

少女と弟は、文明を空気のように吸って育ってきた。
疑問も何も抱いていない。
自然の中でなら、あっという間に消えてなくなる命だけど、
純粋無垢な文明の最終兵器にも成りうる。

アボリジニの少年は、16歳過ぎると、成人への通過儀礼として、
ひとりで狩りをしながらさまよう。
それが「WALKABOUT」なのだそうだ。
狩りをする姿は鋼のようだ。

鳥の羽を飾り、全身に化粧を施し、求婚のダンスを踊る姿が、
一見、何かの冗談のように見えてしまう。
でも、それは、命を賭けた真剣な振る舞いだと気づいて、
呆然とする。

ただ純粋無垢でいるだけで、悲劇は起こる。