写真-23
安曇野シャンティクティの臼井さんの庵。
鴨長明の方丈の庵ではないけれど、
シンプルに暮らすことの美しさがここにあった。
簡素な庵から思想や哲学が溢れ出る図は愉快だ。

足していくのではなくて、引いて引いて引いて実現する究極の暮らし。
このモバイルハウスには、インドのノコプロジェクトで作ったのと
同じモデルのモバイルコンポストトイレもある。
雨の日だったから、トタン板で雨を防いでいたけど、
青空の下にポツンと置かれている究極のトイレだ。

週末にここ安曇野で報告会を開催させてもらって、
私たちのやってきたことの意味を改めて考えた。

学校の壁を使ったウォールアートフェスティバルは
白い壁をキャンバスにした芸術祭。
白い壁さえあれば、アートが展開できる。
こんな芸術祭ができることを伝えよう、とスタートした。
招聘アーティスト淺井裕介は、
「これまでアートは100年、200年残すために心を砕いてきたけど、
僕らの世代にとって、それは重いんだよね」と、
すぐに跡形もなく剥がせるマスキングテープ作品や
水と土に戻る泥絵を描いた。

そして絵を描いた結果、
教室の壁は消滅し、
無限のアートの宇宙が出現した。

その中で子どもたちの心がうきうきと浮遊しだした。
方丈の庵から思想や哲学が溢れ出るように。

教室の壁はアートになった。
では、子どもの心は……?

識字率50%に満たない先住民たちの村。
子どもたちは、教師や医者や科学者になりたいと夢を見る。
だけど。
キミたちはまだ、気づいていないかもしれないけれど、
実はキミたちはもっともっと自由だ。
何にでもなれるんだよ。
誰かの押しつけなんていらないって思ってみてごらん。
ゆっくりと未来に向かっていけばいい。
この絵の中で、
アートの中で、
心を柔らかく膨らませてみて。

壁が役目を果たしたら、白く戻して、
また描きたくなったら、今度はキミたちの中から
出てきたアーティストが描けばいいね。

キミたち、ワルリ族が持っている生きる力はすごい。
よその世界からやってきた私たちに
唯一できることは、
キミたちが持っている素晴らしい世界観や資質について、
拍手すること。

何かを持ち込むことはしたくないと思っている。
私たちが持ち込むとしたら、
それは、タイムマシンでやって来た未来人みたいに、
一つの見えない小石を置いていく行為。
それがノコプロジェクトだ。
少しだけ未来への方向を変えてみること。

私たちが歩んでみた発展の形はすでに経験済みだからわかる。
日本という素晴らしい風土、農業をおざなりにして、
アスファルトの道、コンクリートの家、
自分たちらしくない暮らし方に憧れて邁進し、
あれこれを手に入れたけどね。
やっぱり違ったかなと思えるから。
このままいったら、地球が何個か必要になってしまうらしいから。

あなたたちが、
牛との暮らしの良さを享受していて、
その暮らしを捨てたくないと願っていることを
今回の村人インタビューで知った。
それはまさに、私たち全人類にとっての希望の光です。