banner-01
ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバーい!!
ダンサー、山崎広太。

三軒茶屋のシアタートラムにて。

暗転。
舞台が明るくなると、
真っ白な部屋に白いベッドと白いカーテン、裸電球、そして冷蔵庫。
思わせぶりな部屋の中に紅いガウンの男。

頭の中に女の声が響く。
ねぇ、あんた・・・と。

もう一人の出演者・安藤朋子のセリフが男にまとわりつく。
天使と悪魔と娼婦を自在に行き来するセリフ回し。
こちらは言葉だけの表現。
下世話な男女の関係。
三面記事の修羅場。
ぐしゃぐしゃに縛り付けたり、
針のように突き刺したり。
愛と嫉妬、驕慢と憎悪のごった煮。

洗練された真っ白な空間が、
セリフと身体表現だけでどす黒く染まっていく。

サミュエル・ベケットの「ねえジョウ」に
インスパイアされた作品という。

女の声に、山崎の身体が反射神経のごとく反応していく。
言葉ではなく、肉体が抵抗し、懐柔し、荒れ狂う。
観客も、炸裂する身体表現の嵐の中に吸い込まれていく。

動かない動きの、能のような美しさ。
身体の動きをすべて顔だけで表現してみせるシーンは圧巻。
藤田康城のミニマルで過酷な演出を
山崎はきっと愉しんでいる。

セリフを放棄し身体表現に代える実験的演劇。
饒舌なセリフ以上に魂が揺さぶられる。
前衛の極みがこれほど私たちの内部に切り込んでくるとは。

見終わると、椅子にぐったりとして、
なかなか席を立てない。
周囲を見るとみんな同じような反応。

終演後、しばらくロビーにいると、
山崎が出てきて、知人たちと話をしている姿があった。
地面から足が10cmくらい浮いているような不思議な立ち姿であった。
そんなダンサーがいることを初めて知った。

明日が千秋楽。


山崎広太 プロフィール 
舞踏を笠井叡、バレエを井上博文に師事。1995年より2001年まで、東京拠点のrosy Coを主宰し、国内外問わず多数公演。建築家の伊東豊雄らとコラボレーション作品他を、シアターコクーン他で公演。2001年より、NYを拠点に移しKota Yamazaki/Fluid hug-hug主宰。BAM (NY)、EMPAC(NY)、Arizona State University(AZ)、Miami Light Project(FL)、Chicago Columbia College Dance Center(IL)、PICA/TBA Festival(OR)、 Melbourne International Festival(Australia)、Dance Theater Workshop(NY)、The Painted Bride Arts Center(PA)、Danspaceproject(NY)、Japan Society(NY)などで公演。現在、ベニントン大学ゲスト講師。07年NYダンス・パフォーマンスアワード(ベッシー賞)受賞。(glowing)2012~13年北米ツアー。新作OQ2015-16年北米ツアー。2007年NYダンス・パフォーマンスアワード(ベッシー賞)受賞。2013年、Foundation for Contemporary Artsアワード受賞。2008年よりBody Arts Laboratory代表。

ARICA(ありか)
2001 年、ベケットのテクストを藤田康城が構成・演出した「彼女はそこに、再び、-Move on Beckett-」に安藤朋子が出演。先鋭的な身体と声(言葉)の探究に重点をおいた実験的舞台が支持を獲得する。その成果を踏まえ、さらなる革新的な演劇創造のために、プロデューサーの前田圭蔵、音楽家の猿山修、詩人・批評家の倉石信乃らと ARICA を設立。01 年 11 月 ARICAとして初めての作品「Homesickness」を皮切りに、年 1-2 作品のペースで新作を制作、上演している。
美術家、映像作家、テキスタイルデザイナー、建築家といった各分野で活躍する人々とのコラボレーションによるそのユニークな活動は、演劇やダンスといった枠を超え、ビジュアルアートや音楽、建築やデザインなどのクリエイティブ・ワークと呼応するパフォーマンスとして注目を集めている。
東京ワンダーサイトや、桐生のノコギリ工場跡地、西麻布スーパーデラックス、横浜・BankART NYKなどといった、いわゆる既成劇場ではない空間での上演も多く、そのサイト・スペシフィックなアプローチや、身体と共振するライブ演奏、メカニカルな装置の導入等を通じて、身体表現の新たな地平を切り開こうとしている。
2005 年 9 月、カイロ国際実験演劇祭の招聘で初めての海外公演を行い、審査員特別賞であるベスト・ソロ・パフォーマンス賞を受賞。08 年にはニューヨーク・ジャパン・ソサイエティに招聘され「KIOSK」を上演、その翌月には東京でも凱旋公演を行い、好評を博す。
2009 年 2 月新国立劇場にて、主催者の東京室内歌劇場の依頼により、藤田康城は、ジェルジ・リゲティのオペラ「ル・グラン・マカーブル」日本初演の演出を行う。本作品は、音楽雑誌「音楽の友」のアンケートにより、2009 年度の国内で行なわれた、全クラシック(海外来日公演・オペラ含む)ベスト・コンサートで 6 位、オペラ部門では最上位に選ばれた。
2009 年 11 月には、ゲストにダンサーの神村恵、栩秋太洋、音楽家の平本正宏を加え、新作「TSUKAI」を川崎アートセンターにて初演。2010 年 1 月には、インド・デリーの国立演劇学校が主催する国際演劇祭に招待され、再び「KIOSK」を上演した。2010 年 10-11 月、ギリシア悲劇「アンティゴネー」に着想を得た「house=woman /家 = 女」を、新宿歌舞伎町の地下廃墟空間で 14 公演。さらに、2011 年 2 月、TPAM in Yokohama の関連企画として、首くくりをゲストに迎え、「蝶の夢 Butterfly Dream」を上演。2012えロック音楽劇「恋は闇」を上演。さらには、海外公演、地方公演やワークショップ・アウトリーチ活動なども計画している。

チケット取り扱い
世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515(10〜19時)
世田谷パブリックシアターオンラインチケット *要事前登録
http://setagaya-pt.jp(PC) / http://setagaya-pt.jp/m(携帯)

問合せ:mail@aricatheatercompany.com

※この記事はアップデートの翌朝、改訂・追記させていただいた。